前回、「半強制的に上下関係の無い集団の一員になる」ことは、学生時代で一旦終了する。
と書いたが、社会人になってしばらくすると、再び半強制的に集団に属する時が来る。それが、「自治会」である。

「半強制的に」というと、何か悪いことのように聞こえてしまうかもしれないが、ここではメリットとしてとらえて欲しい。人は誰しも何らかの集団に属している。それが１つの集団だけの人もいるだろうが、多くの場合は、複数の集団に所属している。そして、それらは、自ら望んで所属する場合もあれば、望まなくして属さなければならない場合もある。

自ら望んでその集団に属している場合は、特に問題はない。それが楽しめるものであったり、知識を高める学びであったり、ストレス解消につながるものであったりしているのだから、その集団に属することに大きなメリットがあることは推測できる。

一方で、自ら望まずその集団に属している場合は、たびたび問題が生じる。楽しめないと感じたり、何の学びにもならないと思ったり、ストレスが溜まると感じることもあるため、その集団に対して悪い印象しか持てず、ついつい、無くなくなれば良いのに…と思えたり、離脱したいと思えるのも理解できる。

ここで、自分の幼少期や小学生・中学生時代を思い出してほしい。

幼稚園や保育園、小学校や中学校には、クラス分けがある。年度が始まる４月には、新しいクラスのメンバーの発表が行われる。クラス替えはいつもドキドキであり、クラス替えの時には、仲良しだった友達と同じクラスになりたいと思ったこともあるだろう。だが、自分の希望は叶わず、半強制的に、仲良しだった友達とは異なるクラスに配属され、落胆して新学期を迎えることもしばしばある。だが、新しいクラスには、これまで知り合えなかった人達がたくさんいて、緊張していて落胆してもいられないのだが、新しいクラスでの生活に慣れてくると、新しい友達もできていて、落胆していた自分の感情が薄れていることに気づく。

クラス分けは面白い。見事に「自分と価値観の違う人の存在」を思い知らされる。「どうやっても、あの子とは仲良くなれそうにない」と思える。そして、その思いがずっと続くこともあれば、何かをきっかけに自分の考えが変わることもあり、「仲良くなってしまった」と自分に驚く日が来る場合もある。

クラス分けにより、どんなメンバーが集まったとしても、半強制的に一つのクラスという枠に収められた以上、クラスの仲間として大いに仲良くすべきであることを教わっていく。

一緒に学び、一緒に遊び、一緒に生活をするメンバーの間には上下関係は無い。多少の力関係があるかもしれないが、公に認められた命令権のある上下関係とは異なる。学校行事でみんなが助け合い、思いやりの心を持って、集団としての目標を達成するために努力する。これを多くの小中学校が学んでいる。そう考えると、自分の希望で所属を変えることができる大人の方が、わがままな存在なのでは無いかと思えてくる。

幼稚園や保育園の園児や小学生、中学生に、所属の選択権は無いに等しい。それでも、１つの集団として、互いを認め合い、生活をしている様を見ると、尊敬に値すると思えるのである。

小学校・中学校で、不本意に振り分けられた集団において、どのようなことを学んだのかを思い出してほしい。クラス分けに始まり、委員会活動や演劇の配役、文化祭や運動会での役割分担など、すべてを希望通り、思い通りにこなしたという人はいないはずである。

他者を認め、尊重し、目標に向かって集団として何かを成し遂げる。そこには様々な考え方の人が集団の一員として参加しており、話し合いで折り合いをつけながら、ゴールに近づけるように努力する。これは大人になってからの自治会や町内会、PTA活動と同じである。

仕事でもボランティアでも、当事者意識を持つことで、その活動に対する考え方が変わる。少なくとも、小学生・中学生時代に、学校行事で何かをする際は、この「当事者意識」はあったはずだ。ぜひ、自治会や町内会、PTA活動にも、ぜひ「当事者意識」を持って、取り組んでいただきたい。

あなたの地域やあなたの子どもが通う学校の良し悪しを決めるのは、組織の一員の意識である。社会人になると、理不尽なことや非合理なことに寛大になれないのも仕方が無いことではあるかもしれない。だが、仕事ではないボランティアの世界においては、ぜひとも子ども時代の心を取り戻していただき、クラスの一員として当たり前に持っていた、「互いを認め合い、尊重できる優しい心」を思い出していただければ大変嬉しく思う。